デュアルNバックの効果を最速で得るためには睡眠が超重要
今回は、デュアルNバック(Dual N-Back)の効果を最速で得るために睡眠がとりわけ重要である理由を解説する。
✅ デュアルNバックという脳トレについて詳しく知りたい方:
→脳力アップできる唯一の脳トレはデュアルNバック(DNB)
✅ デュアルNバックを習慣化するヒントを探している方:
→デュアルNバックを習慣化するために役立った5つのこと
→デュアルNバックで効果を感じられない5つの理由
→デュアルNバックを継続できない5つの理由
✅ デュアルNバックをやるべきか迷っている方:
→なぜデュアルNバックで脳がアップグレードされるのか?
→デュアルNバックには「1億円の価値」がある?
✅ デュアルNバックで実際に得られる効果を知りたい方:
→デュアルNバックの習慣化によって得られた7つの効果
デュアルNバック(DNB)は、ワーキングメモリー(作業記憶 / 短期記憶)を鍛えることで、流動性知能を含めた脳の総合的な力を向上させることができる脳トレだ。
流動性知能は、知識や情報をどこから、どのように得たのかという実質的な頭の良さを評価する指標で、その人がすでに保持している知識の内容や質を評価するIQなどのような結晶性知能とは異なる。
同じクラスの生徒たちが、同じ時間、同じ教師から、同じことを教えられても、テストで同じ点を取ることはない。
それは生徒たちがまったく同じように学ぶのではないからだ。持っている流動性知能のレベルが異なっているということだ。
『シリコンバレー式超ライフハック』P.87
この流動性知能は「生まれつきのもので、強化することはできない」と長い間信じられていた。
ところが、2008年にある研究グループが「作業記憶が流動性知能にとって重要」であることに着目し、「作業記憶を向上させることで、流動性知能も向上させることができるのではないか?」と仮説を立て、検証してみたところ、彼らの仮説は正しかったことが証明された。
そこで、使われたのが作業記憶を向上させることがわかっていたデュアルNバック(DNB)だ。
1日30分、5週間、デュアルNバック(DNB)を続けた被験者たちの流動性知能は、平均で40%も増加した。
つまり、実質的な頭の良さも、デュアルNバック(DNB)という脳トレで改善することができるというわけだ。
デュアルNバックは作業記憶を酷使する
デュアルNバックに一度でも挑戦したことがあるならば、これを習慣化することがどんなに難しいかおわかりいただけると思う。
何事も継続しないことには効果は得られない。
が、デュアルNバックは「ただ継続すること」が非常に難しい。
かくいう僕も、何度も挑戦してはその度に挫折を繰り返してきた。
自慢するつもりはないけど、挫折することに関してはプロ級だ。
デュアルNバックに限っても、挫折した回数は片手じゃ数えきれない。
でも、そんな僕でも現在4ヶ月以上連続でデュアルNバックに挑戦し続けている。
具体的な数字を出すなら、去年(2021年)の12月9日から始めて昨日で140日連続ということになる。
(信じられなければ、僕のTwitterでの毎日の報告をチェックしてみて!)
それも1日5回や10回ではなく、きちんと毎日20回、約30分を140日間1日も欠かすことなく、この脳トレに捧げてきた。
幾度となく挫折を繰り返したのちに、ようやくデュアルNバックの習慣化に成功したのだ。
ご覧のように、今では11-Backの挑戦が180回を超え、12-Backの挑戦も70回を超えた。
そして、13-Backにも手が届き始めている。
これは、1ヶ月以上も4-Backで苦戦していたときには想像することさえできなかったことだ。
まだ主観的なものにすぎないが、脳力もかなり向上した。
今ではもうデュアルNバック以上に価値のある1日30分の使い道を思いつけなくなり、死ぬまで毎日コレをやり続けることを決めた。
まさに「我、デュアルNバックをやる故に、我あり」といった心境だ。
なぜ挫折のプロとも言える僕が、突然デュアルNバックの習慣化に成功したのか?
その秘訣は、脳の神経可塑性という性質によって保証されたデュアルNバックの真の価値を学んだこと。
神経可塑性をザックリ説明すると、「良く使われるニューロン(神経細胞)のつながりは強化され、そうでないニューロンのつながりは衰える」ということ。
そして、僕たちがデュアルNバックに挑戦するたびに、作業記憶に関わるニューロンのつながりが酷使され、その神経回路が強化・最適化される。
僕たちがデュアルNバックに捧げた時間とエネルギーは、一切無駄にならず、物理的に作業記憶に関わるニューロンに変換されて、僕たちの脳に蓄積されていく。
ここにファンタジーの要素は一切ない。
これは、ロンドンのタクシー運転手の脳に起こっていることと全く同じだ。
つまり、100%科学の話ってこと。
脳を肥大化させるほどの資格試験
約25,000本の道と名所や施設をすべて頭に叩き込まなければ、ロンドンのタクシー運転手にはなれない。
彼らはたいてい何年もかけて、ロンドンの地図を片っ端から記憶する。
この常人には到底なし得ないと思われることを成し遂げた彼らに興味を持った神経学者が彼らの脳を調べてみたところ、脳の短期記憶を司る海馬が常人と比べて顕著に肥大していることが明らかになった。
デュアルNバックは、脳の作業記憶(短期記憶)に関わるニューロン群を酷使する脳トレだ。
つまり、デュアルNバックを習慣化した人の脳には、これと同じことが起こりうるってことだ。
厳密に言えば脳の少し異なる部位ってことになると思うけど、デュアルNバックの習慣化によって物理的に肥大化したニューロンのつながりが、僕たちの総合的な脳力を高めてくれることは間違いない。
あなたの脳は、デュアルNバックに挑戦すればするほど、物理的に大きく、強く成長する。
そして、もしあなたがその成長速度を速めたいなら、睡眠がとりわけ重要になる。
なぜならニューロンのつながりは、あなたが眠っている間に強化されるのだから。
というわけで今回は、デュアルNバックの効果を最速で得るためには睡眠がとりわけ重要だという理由を解説したい。
ニューロンを育む、とりわけ重要な2種類の睡眠
起きている間に使われたニューロンは、眠っている間に成長する。
だけど、すべての睡眠に等しくニューロンを成長させる効果があるわけではない。
ニューロンの成長のために、とりわけ重要なのは次の2種類の睡眠だ。
- レム睡眠
- ステージ2のノンレム睡眠
これからこの2つの睡眠がなぜニューロンを育むためにとりわけ重要なのか、詳しくみていこう。
レム睡眠について現在わかっていることその①:レム睡眠はニューロンのつながりを強化する
ニューロンのつながりを強化することは、レム睡眠の役割だ。
デュアルNバックでどれだけニューロンを酷使しても、レム睡眠がなければそのつながりは強化されない。
これは「レム睡眠が最も増えるのは、脳の発達が最も活発になる時期」ということからもわかる。
つまり、胎児や生まれたばかりの時期だ。
妊娠後期になれば、トータルの睡眠時間は減ってくるが、それに逆行するようにレム睡眠だけは爆発的に長くなる。
妊娠の最後の2週間になると、胎児のレム睡眠は1日に9時間近くにもなる。
そして最終週になると、レム睡眠は生涯最長とも言える1日12時間だ。母親のお腹の中にいるときから死ぬまでの間で、ここまで長いレム睡眠を経験する時期は他にない。
『睡眠こそ最強の解決策である』P.98
脳の発達は、妊娠の3分の1を過ぎてから急ピッチで進んでいく。
これはレム睡眠の時間が爆発的に増える時期と一致している。
もちろん、この一致は偶然ではない。胎児の脳は、レム睡眠という電気刺激を養分にして成長するからだ。
レム睡眠時に発生する活発な電気信号が刺激になり、脳内の神経の通り道が続々と築かれていく。
『睡眠こそ最強の解決策である』P.99
では、この時期の赤ちゃんのレム睡眠を奪うとどうなるか?
(想像するのも恐ろしいが)脳の建設工事はストップし、その後レム睡眠を取り戻しても、脳の発達の遅れは一生残る。
赤ちゃんの睡眠は、この世で最も奪ってはいけないものの1つであるのは間違いない。
脳がほぼ完成している大人においても、レム睡眠はニューロンのつながりを強化する役割を担っている。
起きている間にどれだけニューロンを使っても、眠らなければそのニューロンは成長しない。
レム睡眠について現在わかっていることその②:レム睡眠は進化的に新しい
地球上のすべての生物は眠るが、完全なレム睡眠が確認されているのは進化的に最も新しい鳥類と哺乳類だけらしい。
その中でも、ヒトの睡眠は特別とのこと。
平均睡眠時間とレム睡眠の割合
- 他の霊長類の平均睡眠時間: 10時間〜15時間、レム睡眠の割合は約9%
- 成熟したヒトの平均睡眠時間: 8時間、レム睡眠の割合は20〜25%
つまり、ヒトの睡眠は「他の霊長類より比較的短く、レム睡眠の割合が異常に長い」と言える。
ヒトよりも長いレム睡眠を得ている動物もいるけど、全睡眠時間に占めるレム睡眠の割合がヒトより多い動物はいないらしい。
なぜヒトのレム睡眠は異常に長いのか?
ヒトのレム睡眠の割合が他の動物に比べて異常に多くなった理由の1つに「火の使用」が挙げられるらしい。
というのも、レム睡眠中は体を支える随意筋が完全に麻痺するため、いくら地上より危険が少ないからと言って、木の上では安心して長いレム睡眠をとることはほぼ不可能だからだ。
地上には猛獣だけでなく、ノミやダニもウジャウジャじゃいる。
非力なヒトが安全な木の上から、そんな危険に満ちた地上に生活を移すことができたのは火のおかげ、と考えるのはそこまで突飛ではないだろう。
つまりヒトは、「火の使用」によって地上の脅威を取り除き、「地球の生物史上初めて、安心して長いレム睡眠を堪能できる環境を整えることに成功した種族」と言えるのかもしれない。
脳の発達を加速した様々な要因
初めて火を使ったのは、180万年前ごろに誕生した僕たちの祖先であるホモ・エレクトスだと考えられている。
ヒトの脳が急速に発達し始めたのも、このホモ・エレクトスの時代からだと言われている。
そしてこの頃、ヒトの生活は大きく変わり始めていた。
- 複雑な石器の加工
- 狩り・肉食の開始
- 狩りのための高度な連携
- 狩りの開始に伴う運動強度の上昇
- 狩り・子育てのための社会の構築
なども、「火の使用によって実現した長いレム睡眠」と同じように、この時代のヒトの脳を急速に発達させた要因であることは間違いない。
脳を酷使する試行錯誤の毎日だったはずだ。
だから、レム睡眠だけを脳の発達の要因とすることはできないが、レム睡眠には「社会を構成する」役割や「創造性を促進する」役割があることもわかっているため、もはやレム睡眠がヒトに他の動物とは異なる「ヒトをヒトたらしめる能力」を授けた大きな要因であることは疑いようがないだろう。
ニューロンを育むためには、まずニューロンを十分に使わなければならない。
あなたは毎日十分に脳を使っていると自信を持って言えるだろうか?
今自信を持って言えなくても安心してほしい。
毎日30分のデュアルNバックで、この条件はクリアできる。
そしたら、次にできることはなんだろう?
もちろん、たっぷり眠ろう!
頑張ったニューロンを十分にねぎらうには、レム睡眠の力が不可欠だ。
レム睡眠にここまでの力が備わっているとなると、ニューロンを育むためにはレム睡眠だけで十分な気もする。
だが、先に紹介したように、ニューロンのつながりを強化するために重要な役割を担っている睡眠がもう1つある。
ステージ2のノンレム睡眠だ。
次は、その睡眠の力を見てみよう。
ステージ2のノンレム睡眠について現在わかっていることその①:スキルの本質であるミエリン(髄鞘)の形成が行われる
ミエリン(髄鞘)は、あらゆるスキル(技能)習得において不可欠なものだ。
というよりも、「ミエリン=スキル」という方がより正確だ。
ミエリンの役割は主に次の2つだ。
- 「①常に全力で発火する」か、「②まったく発火しない」ことしかできないニューロンの発火速度をコントロール(調整)すること
- それを自動化すること
バスケットボールのシュートであれ、野球のスウィングであれ、サッカーのリフティングであれ、自転車の乗り方であれ、スキル(技能)を習得するために僕たちがするのは反復練習だ。
反復練習によって僕たちがスキルを身につけられるのは、それによってミエリンが作られるから。
反復練習によって、その動作に関わるニューロンが何度も発火する。
そして、何度も繰り返し発火するニューロンにミエリンが巻きつき、ミエリンがその動きを自動化することでスキルが形成される。
これによって、僕たちは意識しなくても同じ動作を何度も繰り返せるようになる。
動きを伴わない思考や記憶などのスキルも同様だ。
デュアルNバックで作業記憶に関わるニューロン群を繰り返し発火させれば、そのニューロン群にミエリンが形成され、情報伝達が自動化(最適化)される。
ただし、反復練習だけではミエリンは形成されない。
反復練習は、ミエリン形成を促すスイッチを押すだけ。
実際にミエリンが形成されるのは、あなたがグッスリ眠っている間だ。
もうおわかりだと思うが、それがステージ2のノンレム睡眠だ。
ステージ2のノンレム睡眠について現在わかっていることその②:ステージ2のノンレム睡眠は起床前の2時間の間に現れる
ノンレム睡眠にはステージ1から4までの4段階が存在する。
ステージ1と2のノンレム睡眠は浅めのノンレム睡眠で、ステージ3と4が深いノンレム睡眠だ。
そして、スキルとなるミエリンが形成されるのはステージ2のノンレム睡眠中で、この睡眠は起床前の2時間の間、長いレム睡眠に挟まれる形で現れる。
つまり、8時間睡眠で深夜0時に就寝するなら、朝の6時から8時の間ということになる。
スキル習熟の要となるスピードと正確性の向上は、ステージ2のノンレム睡眠と直接的なつながりがあった。
『睡眠こそ最強の解決策である』P.157
「もっと長く寝てたいけど、仕事に遅れるから起きなくちゃ」というのは、ほとんどの人が送っている日常だと思うけど、これによってステージ2のノンレム睡眠の大半が犠牲になっていることはおわかりいただけるだろう。
部活動に勤しむ学生も、練習の意味をもっと真剣に考えた方がいいかもしれない。
練習は、ミエリンの形成を促すスイッチを押すためにするものだ。
そしてミエリンは、ステージ2のノンレム睡眠中に形成される。
朝練をするために早起きしているとしたら、このステージ2のノンレム睡眠が犠牲になり、せっかくの努力が無駄になっている可能性がある。
あなたが獲得したいスキルがなんであれ、ステージ2のノンレム睡眠を犠牲にするようでは本末転倒。
あなたの努力があまりにももったいない。
練習と睡眠はセットと考えていただけたらと、切に願う。
これを学生の頃に知っていたら、間違いなく僕もそうしただろうに。
そして、モテモテのスクールライフを送っていたに違いない!
デュアルNバックの効果を最速で得るために睡眠がとりわけ重要な理由まとめ
いかがだっただろうか?
デュアルNバックの効果を最速で得るために睡眠、特に「レム睡眠」と「ステージ2のノンレム睡眠」が重要だということをご理解いただけただろうか?
今回お伝えしたかったことをまとめると、次のようになる。
- 脳力を最速で向上する方法 = デュアルNバック × (レム睡眠 + ステージ2のノンレム睡眠)
デュアルNバックに挑戦するたびに作業記憶に関わるニューロン群が発火 → ニューロン群の成長 & ミエリンの形成を促すスイッチON → 起床前の2時間の睡眠中にミエリンが形成され、ニューロン群が成長する
特に覚えておいてほしいことは、ニューロンの成長とミエリンの形成に欠かせない2種類の睡眠は、両方とも起床前の2時間の間に最も長く現れるということ。
デュアルNバックをやって、8時間たっぷり眠って、パッチリ起きれば完璧だ。
これを毎日継続すれば、あなたの脳力は最速で向上し続ける。
僕の脳力もかなり向上した。
デュアルNバックを始める前では考えられないほど、この140日で僕にとっての「普通」のレベルが上がった。
以前はできなかったことが、今は普通にできる。
だけど、ここが僕の限界じゃない。
このまま同じプロセスで昇り続けたら、3ヶ月後、6ヶ月後、1年後の自分に何が可能になっているのか?
それを考えると本当にワクワクして仕方がない。
ただ、僕はオーラリング(Oura Ring)という睡眠分析ツールを使って、自分の睡眠を分析しているけど、まだまだ僕の睡眠は完璧からほど遠い。
デュアルNバックの習慣化には成功したけど、睡眠がこれではあまりにもったいない。
だから睡眠の質を改善することは、僕の喫緊の課題だ。
睡眠を最適化できれば、毎日のデュアルNバックで発揮できる力が上がり、脳力アップのスピードも加速するに違いない。
僕が実際にどんな脳力を獲得したのか、このブログでの今後の報告を楽しみにしていてほしい。
早ければ1年以内に、「バケモノ級の脳力」の獲得を報告できるかもしれない。
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参考書籍